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別表1 デブリーフィングの効果比較表

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神経の消耗)に発展する恐れがある。
阪神・淡路大震災という消防の戦場で戦った消防職員達の声は悲痛である。「水の出ないホースを持った消防ほど情け無いものはない本当に辛かった」、「生き埋めになったおばあちゃんを救出しようとしたが、火の手が迫って助けたせなかった。今でもおばあちゃんの顔が目に浮かぶ」、「地震の時は当務中で、自分の家族の安否も確認出来ないまま消火や救助活動に追いまくられた。消防職員としての使命感と家族の安否が確認出来ない不安から、一時も心が休まらなかった」………これらはCISを引き起こす高ストレス状況であり多くの消防職員等が何らかの心的外傷を受けたであろうことは容易に想像できる。
職員の中には、思い出したくもない凄惨な場面を何かのはずみに想起するフラッシュバック現象や睡眠障害、悪夢、慢性の疲労感、イライラ、集中力の減退等を震災直後からしばらくの間体験した人も多いのではないか。
三、心傷性災害ストレス(CIS)とは何か
CISは、日本語としての定訳がなく災害ストレス、特異災害ストレス、惨事ストレス、と色々に表現されているが、私個人としては心傷性災害ストレスと翻訳した方がその内容を心理学的に説明しているような気がしている。
本稿では日本語訳にこだわらず単に「CIS」として表現を統一したい。
CISは、消防職員等の緊急業務従事者特有の職業ストレスとして米国のメリーランド大学のジェフリー・ミッチェル博士(Jeffrey T.michel,Ph.D)等によって研究が進められた比較的新しいストレス概念である。
ベトナム戦争帰還兵の治療研究から、米国でPTSDという診断名が使用されるようになったのは昭和五五年であり、この年に初めて精神障害の診断統計マニュアルである米国精神医学会のDSM−III(診断基準第三版)にPTSD)が個別の病名として登場したが、CISおも同じ頃に登場してきた概念である。
CISは、災害や戦争、犯罪さらには親しい人による裏切り等、あらゆる種類の心を傷つける出来事の結果として、個人やグループにみられる様々なストレス反応のことである。消防職員は危険な災害現場で活動するのが仕事であるが、時には阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件等のように経験豊富な消防職員でさえも精神的に衝撃を受けるような心傷性の特異な災害があり、その結果生じたストレス反応をCIS(心傷性災害ストレス)と呼んでいるのである。
米国ではCISは、消防等の緊急業務従事者の職業ストレスとして位置づけられている。消防や警察は職業柄、凄惨な現場で死の恐怖を感じながら活動することが多く、その役割行

 

 

 

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